ウィズ・思い出

ウィズの思い出

思い出1

ウィズ

はじめまして。私はウィズ。

一応、魔法使いをやってるにゃ。

よろしくだにゃ！

白い八重歯を見せながら、

ウィズと名乗る少女は

にゃはは、と笑った。

キャトラ

えーと……

その語尾はなんなの？

ウィズ

あー……ああ、

実は猫だった時期が

あったにゃ。

アイリス

本当ですか？

ウィズ

そうそう、

まあなんやかんやあって

猫になって……

なんやかんやあって

この世界に来たのにゃ。

アイリス

さ、さっぱりわからない……！

キャトラ

そういえば、

語尾に『ニャ』をつける奴が

他にもいたわね……

ミィニャ

呼んだかニャ？

キャトラ

呼んでないわよ！

ウィズ

あら、キミは猫の獣人なのかにゃ？

気が合いそうだにゃ！

ミィニャ

だニャ！

仲良くやるニャ！

キャトラ

……頭痛くなってきちゃった。

アイリス、後は任せてもいい……？

アイリス

そ、そんなぁ……

思い出2

ウィズ

～♪

指先で綺麗な石を弾きながら、

ウィズは鼻歌を歌っている。

アンナ

……ん？

アンナ

い、イヤぁ～～ッ！

キャトラ

どうしたのよ、急に叫んで。

アンナ

ウィズさんが、

ほ、ホタル石で遊んでますわ……！

アイリス

ええっ！？

手のひらいっぱいで

国が買えるっていう、あの……？

ウィズ

タダのホタル石じゃないかにゃ、

私にとっては別に

珍しいものでもないし……

クエス＝アリアスでは、

そこらへんの浜辺に

ゴロゴロしてるにゃ。

ひときわ大きなホタル石を

つまんで、ウィズは

にゃはは、と笑う。

ウィズ

そんなに珍しいなら、

ひとついるかにゃ？

アンナ

えっ。

ウィズ

ほらほら、遠慮しにゃいで。

アンナ

ちょっ、えっ、

この大きさはさすがに

いただくわけには……

ウィズ

もっと大きいのもあるにゃ。

はいこれ。

アンナ

……うふふ。

うふふふふふふふふふふふ。

アイリス

あ、アンナさん？

アンナさん！？

ウィズ

さらに大きいのもあるにゃ。

アンナ

アーッハッハッハッハッハ！！

たのしいですわ～！！

キャトラ

コレ以上はアンナが壊れちゃう！

も、もうやめてあげて～！

思い出3

クライヴ

――という感じかな、

俺の生まれ故郷は。

誇らしげに、

クライヴはウィズに

自分の故郷のことを話している。

ウィズ

にゃるほど、話を聞くかぎり、

すごくステキな場所だにゃ。

クライヴ

そうだろ？

作物では特に、小麦が自慢だ。

パンにした時は格別だ。

きっとウィズのところのパンよりも

うまいぞ。

ウィズ

……それは聞き捨てならんにゃ。

ピシッ、と二人の間の空気に

亀裂が入る。

キャトラ

ちょ、ちょっと二人共、

ケンカはだめよ。

ウィズ

フン、そんなことしないにゃ。

パンしか自慢できない奴となんて。

クライヴ

なんだと？

ウィズ

私の故郷は魚が

最高に美味しいにゃ、

焼いても煮ても最高にゃ。

クライヴ

言うじゃないか。

パンと魚だけでよくそこまで。

ウィズ

にゃんだとぅ……？

クライヴ

うちの国はな、

ハンバーグもうまいぞ！

小麦がいいぶんエサも

最高級だからな！

ウィズ

ニャッハッハッハ、片腹痛いにゃ。

ケーキはこちらが上にゃ！

クライヴ

カレーなら負けん！

ウィズ

ビスケット！

クライヴ

グラタン

ウィズ

クッキー

キャトラ

好きな食べ物の

言い合いじゃないのこれ……

思い出4

ミラ

あら、見かけない方ですね。

何かお悩みはありませんか～？

ウィズ

ああ、キミは悪魔かにゃ？

ミラ

ええ、あたし実は悪魔なんで……

ん？

アイリス

一発で見抜いた！？

ミラ

いやいや！

ちがいます！

ちがーいまーす！

キャトラ

ごまかせてないわよ……

ミラ

ちがうの！

ほら、ちょっと悪魔っぽいだけで、

ジャンル的にはそう見えるだけで！

ミラはぶんぶんと

首を横に振っているが、

ウィズはお構いなし。

ウィズ

すごいにゃ、一度悪魔と

お話してみたかったんだにゃ。

ほらほら、

ここに座ってにゃ。

えーと何を聞こうかにゃ……

ご趣味は何かにゃ？

ミラ

し、信徒集めを少々……

ウィズ

にゃるほど、良い趣味にゃ！

楽しそうなウィズ。

対してミラはとても居心地が

悪そうだ。

ミラ

あ、あいりす、たすけて。

アイリス

ご、ごめんなさい……

ウィズ

尻尾さわってもいいかにゃ？

ミラ

わきゃ～！　や～め～て～！

キャトラ

ホント怖いものなしね、

この人……！

思い出5

キャトラ

ウィズ、もうこの世界には慣れた？

ウィズ

うん、だいぶこの体も

馴染んできたにゃ、

それに面白いことが多くて

飽きないにゃ！

アイリス

よかった、楽しんでもらえて。

ウィズ

にゃはは、

どんな状況でも楽しめるのが、

私の良いトコロだにゃ。

ふと、ウィズの表情が曇る。

ウィズ

でも――

ひとつだけ、

気がかりなことがあるにゃ。

ウィズは空を見上げて、

ひとつため息をつく。

ウィズ

実は、私がいた元の世界……

クエス＝アリアスに、

置いてきたパートナーが居るにゃ。

きっと、私のことを

心配してるにゃ。

キャトラ

ウィズ……

思い出6

キャトラ

な、なに！？

アイリス

これは……

空間の壁が、破壊されて……！

バキバキと耳障りな音を立てて、

空間の壁が割れていく。

キャトラ

どういうこと、まさか侵略者！？

ウィズ

この魔力のクセ……

違うにゃ、これは……

私の居た世界――

クエス＝アリアスの……！

キャトラ

それって、まさか……

アイリス

きゃあっ！

次の瞬間、空間のヒビは消え……

ひらり、とウィズの手元に

一通の封書が舞い降りてきた。

キャトラ

開けても大丈夫なの？

ウィズ

にゃはは♪

心配いらないにゃ。だって――

これは、私のパートナーからの

手紙だからにゃ。

ウィズは手紙を開き、

それを読み始める。

ウィズ

まったく、ムチャするにゃ……

キャトラ

そのひと、良いパートナーなのね。

ウィズ

当然にゃ、なんせ私の

パートナーなんだからにゃ！

笑いながら、

ウィズは目もとを一度拭う。

ウィズ

さあ、これで心配は

無くなったにゃ！

アイリス、キャトラ、それに

主人公。

これからも、よろしくだにゃ♪

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