イザベラ・思い出

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思い出1

？？？

ごきげんよう。

鋭い指示棒を携えた美女が、

眼鏡の奥からキツくにらんでくる。

イザベラ

私はイザベラ。

イザベラ先生とお呼びなさい。

アイリス

はい、よろしくお願いします。

イザベラ先生。

キャトラ

よろしくねー。

イザベラ

なんですその口の利き方はッ！

キャトラ

うひぃっ！？

イザベラは、指示棒を鞭のように

長く伸ばし、びしぃっ、

と地面を叩いた。

イザベラ

『よろしくお願いします』……

でしょう？　少しは

その子を見習いなさい！

キャトラ

よ、よろしくおねがいしますっ！

イザベラ

少し声が上ずっているわね。

――まあいいわ。

アイリス

イザベラ先生は、

どうしてこの島に？

イザベラ

調査のためです。

この飛行島の特殊性については、

我が学園も注目しているの。

アイリス

学園？

イザベラ

魔法学園よ。

私はそこで研究を行いながら、

古代魔法学の教鞭を執っているわ。

古代魔法学の見地からしても、

この島はまさしく知の宝庫……！

アイリス

発見があるといいですね。

イザベラ

主人公。

あなたも調査に協力するのですよ。

よろしくて？

思い出2

アイリス

先生。古代魔法学って、

どういうものなんですか？

イザベラ

簡単に言うと、ルーンを使わずに

発動する魔法ね。

まだ研究は途上だけれども。

アイリス

ルーンを使わずに……

キャトラ

イザベラの授業なら、生徒も

きっと優秀なんだろうな～。

イザベラ

イザベラ先生とお呼びなさい、

と言ったでしょう？

これは調教が必要なようね……

キャトラ

ひいぃごめんなさい先生！

イザベラ

……教師の質と生徒の優秀さは

また別だわ。私の調教もまだまだ

足りないみたい。

アイリス

調教……？

イザベラ

劣っている生徒には通常の授業とは

別に、個人調教を行っているから

もう大忙しよ。

キャトラ

『調教』って……

良からぬことを考える生徒も

いるんじゃないかと思うの……

イザベラ

さぁ、それはどうかしらね。

私は教師として当然のことを

しているだけよ。フフッ。

キャトラ

妖しい……そして怖い……

アイリス

私もイザベラ先生の授業、

受けてみたいです。

イザベラ

見込みがある子ね、アイリス。

知識に貪欲な生徒は歓迎よ。

キャトラ

アイリス、気をつけて……

何をされるかわからない……

イザベラ

何か言ったかしら？

キャトラ

いいえ！　何も！

思い出3

イザベラ

はあ……

アイリス

お疲れですか、イザベラ先生？

お茶、飲まれます？

イザベラ

あら、気が利くこと。

ありがとう、ぜひいただくわ。

キャトラ

で、何に悩んでんの～？

イザベラ

そうね……いろいろよ。

学園始まって以来の問題児と

そのライバルをどう扱うかとか……

キャトラ

問題児に……ライバル？

イザベラ

えぇ……その子、成績は優秀だけど

問題行動が多くて。

そして、その子を敵対視している

生徒も色々と振り回されているし。

キャトラ

あれだ、『全然勉強してないよー』

とか言ってるくせにちゃっかり

テストの点数はいいタイプの人だ。

イザベラ

そうなのよね。

でも何かと騒動を起こすから、

目が離せなくて……

アイリス

先生って大変なんですね……

イザベラ

それだけじゃないわ。

頼りない軟弱教師を、

どう調教しようか……とかね。

キャトラ

ここでも『調教』……

イザベラ

あの方は理事長のお孫さん

なのですから、

しっかりしてもらわなくては。

生徒を正しく導くのが教師の役目。

頼れる存在でなければ、

教室は務まらないのよ！

軟弱教師は私が調教し、

立派な教師に変えなければ！

キャトラ

大変ねぇ……その人が。

思い出4

イザベラ

ふう……

アイリス

今日もお疲れなんですね、

イザベラ先生。

イザベラ

えぇ、教師という仕事はやりがいは

あるけど、なかなか思い通りには

いかないものよ。

手のかかる子ほどかわいい、とは

言うけれど、やっぱり疲れるわね。

キャトラ

だから毎晩おでんの屋台で

くだを巻いてるのね。

イザベラ

――！

なぜ知っているの？！

アイリス

最近評判のおでん屋台がある、って

聞いたので、この前見に行って……

キャトラ

偶然見かけただけよ～。

イザベラ

そ、その話はここだけに

してちょうだい！

キャトラ

なんで～？

イザベラ

せ、生徒を導くべき教師が屋台で

毎晩飲んだくれてるなんて

知られたら、威厳も何も

あったもんじゃないわ！

アイリス

でもおいしいですよ？　おでん。

イザベラ

おいしいとかそういう問題では

ないの！

私も……好きだけど……

アイリス

じゃあ今度おでんパーティを

しましょう！

キャトラ

いいねそれ！　カニカマも入れて！

イザベラ

おでんが食べたいわけじゃ

ないのよ？

……まぁ、子供にはわからない

話でしょうけども……

キャトラ

イザベラは何が好きー？

イザベラ

……はんぺん。

思い出5

イザベラ

ああもうっ、まったくっ！

キャトラ

ど、どうしたのよぉ、先生？

イザベラ

どうもこうもないわ！

生徒は言うことを聞かないし、

宿題を与えても全く手を

つけないし……調教するにも

度を超えているわ！

アイリス

個別授業で対応するのにも

限界がありますしね……

イザベラ

それだけじゃないわ！

それを叱るべき教師は軟弱で、

マヌケでトロくて役立たずだし！

キャトラ

ひどい言われようね、その人……

イザベラ

しかも、私がどんなに調教しても

直るどころか喜んでるのよ！

キャトラ

それはなんか、うーん……

イザベラ

ああっ、もう！

どうしてこうも、

クズばかりなのかしら！

こんなことでは、私がいくら

身を粉にして働いても、学園の

ためにならないじゃないの！

キャトラ

最近屋台での目撃情報が

多いなって思ってたけど……

アイリス

本当に大変なのね、イザベラ先生。

イザベラ

こんなんじゃ、私の胃が限界よ！

連日の深酒で、ずっと

二日酔いなのよ！

キャトラ

それはちょっと違うような……

イザベラ

もう私じゃお手上げよ！

教師なんて続けていられないわ！

思い出6

イザベラ

――この光は、ルーンの光……

でも、こんな光は見たことがない……

主人公、

あなたはいったい……

少し、焦りすぎていたみたい。

あの光を見たおかげで気づけたわ。

ありがとう主人公。

アイリス

よかったです、イザベラ先生。

キャトラ

二日酔いは良くなったー？

イザベラ

心配かけたわね、ありがとう。

私はもう大丈夫。

未熟な生徒を私が導く……

そう思っていたけれど、教師の私が

まだまだ未熟だったのね。

私だって、まだ多くのことを

学ばなければならないのよ。

私が成長し、未熟な生徒たちを

ビシバシ調教するわ！

キャトラ

あ、怖い方のイザベラに戻った。

イザベラ

キャトラ、その言葉遣いを

正しなさい！

あなたから調教をしなければ

ならないようね……

キャトラ

にゃにゃー！　ごめんなさいーい！

イザベラ

キャトラの次はあのダメ教師の

調教ね……

ふふ、久々に燃えてきたわ！

アイリス

先生、頑張って！

キャトラ

アタシとそのダメ教師の心配も

してよアイリスぅ～！

イザベラ

その心配はいらないわ。

たっぷり可愛がってあげる。

覚悟しなさい！

アイリス

……でも、『調教』って

何をするんだろう……