オレリア・思い出

オレリアの思い出とボイス

思い出1

キャトラ

……？

なにかしら、この音楽……

アイリス

重たく響くかんじの音色ね。

誰かが演奏してるのかしら？

飛行島の一角――そこには、
凛とした女性が大きな楽器を手に、
一心に演奏していた。

？？？

……あら、あなたたち、

この島の人かしら？

キャトラ

そうよ～。アンタは見たところ

旅の演奏家ってかんじ？

オレリア

あたしは、オレリア。

こう見えて軍楽隊の楽士なの。

よろしくね。

アイリス

軍楽隊……軍人さんなんですか？

オレリア

そうね、帝国軍の所属になるわ。

オレリア

あたしの仕事は、帝国の行事や

軍隊のパレードで

演奏することなの。

キャトラ

へぇ～、帝国の人なら

ウチでもたまに見かけるけど、

アンタみたいな人は珍しいかも。

オレリア

そうかもね。

あたしは楽士だけど、今は任務で

帝国を離れている身だから。

アイリス

任務ですか？

オレリア

まあ、そこはおいおい話すわ。

別に秘密ってわけでもないしね。

キャトラ

あ、しばらくここにいるのね。

オレリア

こういう空の上だと障害物がなくて

音がよく通るかんじがするのよ。

演奏しててとても気分がいいわ。

オレリア

今のはただのリハーサルだけど、

演奏会も開く予定だから、

ぜひ聴きにきてね。

キャトラ

演奏会かぁ～。

なんだか賑やかになりそうね！

アイリス

ふふ、楽しみにしてますね。

オレリアさん。

思い出2

キャトラ

オレリアって、ずっと一人で

旅してたんだよね？

オレリア

ええ、そうよ。

キャトラ

このご時世、丸腰じゃ危険でしょ？

よく今まで無事でいられたわね。

オレリア

うん？　丸腰じゃないわよ？

ちゃんと武器は持ってるわ。

キャトラ

へ？　どこに？

見た感じどこにもないけど……

オレリア

コレよ。

アイリス

……まさか、そのチューバが

オレリアさんの武器なんですか？

キャトラ

えぇ！？　でもそれ、

武器じゃなくて楽器じゃん！

オレリア

ん～、まあそれが普通の反応か。

……あなた、ちょっといいかしら？

オレリア

モノは試しってね。

その剣であたしに打ち込んでみて。

遠慮はいらないわよ。

アイリス

だ、大丈夫？

主人公？

キャトラ

楽器が剣を弾き返した……？

う、ウソでしょぉ～……

オレリア

このチューバは、軍楽隊の楽士に

代々継承されてきた特別製なの。

オレリア

だからちょっとやそっとじゃ

傷もつかないし、演奏に支障を

きたすこともないわ。

キャトラ

なんかもう武器なのか楽器なのか

わかんなくなってきたわね……

オレリア

それに、あたしたちは時として

戦場で演奏任務につくこともある。

軍の士気高揚のためにね。

オレリア

だから万が一に備えて、いつでも

戦えるようにしないといけないの。

アイリス

なるほど……

オレリア

ちなみに、あたし以外の楽士たちの

楽器も、武器としての機能や

仕掛けがあったりするのよ。

キャトラ

ふ～ん、たとえばどんな？

オレリア

あたしが知る限りだと……

チェロの中に火器を仕込んでたり、

他にも軍刀を隠してたり……

オレリア

あ、ギターとかもなかなかの

切れ味で、かなり強力らしいわよ。

キャトラ

さすが軍人さんね……

思い出3

オレリア

ふぅ……いい香りだわ。

キャトラ

なになに、お茶会？

アタシも交ざりた～い！

アイリス

もう、キャトラったら……

オレリア

ふふ、もちろんいいわよ。

今、カップを用意するわね。

アイリス

おしゃれなティーセットですね。

紅茶がご趣味なんですか？

オレリア

帝国にいる元同僚の影響でね。

演奏の休憩にちょうどいいのよ。

キャトラ

『元』同僚……？　それって

楽隊の人じゃないってこと？

オレリア

彼女は、帝国陸軍所属の軍人なの。

あたしも……昔はそこにいたのよ。

キャトラ

あれ、そうだったんだ。

オレリア

あたしの家は代々軍人の家系で、

親も兄弟も軍人になるための教育を

受けてきた。もちろんあたしもね。

オレリア

でも、子供の頃のあたしは貧弱で、

軍人の素養なんてこれっぽちも

なかったの。

キャトラ

それはまた……

きっと大変だったんでしょうね。

オレリア

ええ……でも、そんなときだった。

兄に連れられて帝国軍の

凱旋パレードを見に行ったのは。

オレリア

そこで一番目を引いたのが

軍楽隊で一際大きい金色の

楽器……チューバだったのよ。

アイリス

それが、その楽器との出会い

だったんですね。

オレリア

子供ながらにカッコいいと思った

んでしょうね。帝国の軍楽隊は

パレードの華だから。

オレリア

それからあたしは、軍人の教育を

受けるかたわら、両親には内緒で

吹奏楽を独学で学んだの。

オレリア

……でも結局、家の言いつけには

逆らえなかったわ。

キャトラ

そのまま軍人さんになっちゃった

わけね。

オレリア

やっぱり色々厳しくて、ね。

それで陸軍の所属になって……

あたしは彼女と出会ったの。

キャトラ

さっき言ってた元同僚って人ね。

オレリア

彼女の趣味で、紅茶の園遊会に招待

されて、そのお礼にってことで

余興に演奏を披露したのだけど――

オレリア

それがことのほか好評を得てね。

演奏が終わって多くの拍手を

受けたとき、あたしは気づいたの。

オレリア

やっぱり自分は音楽が好きで、

これがあたしにできる一番のこと

なんだってね。

アイリス

それじゃあ……

オレリア

そう。あたしの演奏の原点――

軍楽隊への転属を志願したの。

オレリア

当然、両親とはかなりもめたわ。

でも、あたしの演奏を

気に入ってくれた彼女が

各所に掛けあってくれてね。

キャトラ

あら、いいお友達じゃないの。

オレリア

ええ、そんな彼女の尽力もあって、

あたしは楽士になることができた。

アイリス

その方がオレリアさんの夢を叶えて

くれたんですね。

オレリア

そういうことになるわね。彼女には

本当に世話になりっぱなしで……

正直申し訳ないくらいだわ。

オレリア

だからあたしは、彼女の恩義に

報いる意味でも、絶対に任務を

達成しないといけないの……！

アイリス

……オレリアさん？

オレリア

――っと、そろそろ頃合いね。

はい、これが帝国自慢の紅茶よ。

冷めないうちに飲んでみて。

キャトラ

わーい、いただきまーす！

アイリス

…………

思い出4

オレリアは、金属の部品を並べて、
一つずつ丁寧にみがいている――

キャトラ

なにしてるの～？

オレリア

チューバの手入れよ。

分解して中身を掃除しているの。

アイリス

そうなんですね……あら？

この部品って……ルーンですか？

オレリア

それは＜響のルーン＞ね。

チューバに内蔵されているものよ。

オレリア

前に、このチューバは軍楽隊で

代々受け継がれてきたって

説明したわよね。

キャトラ

うん、特別製って話よね。

オレリア

実は、本当の意味で受け

継いできたのは、楽器じゃなくて、

このルーンのほうなの。

オレリア

だから、いくら演奏ができても、

ルーンの力を引き出せないと

一人前とはいえないのよ。

キャトラ

ルーンの力って？

オレリア

チューバは重厚で響くような低音が

特徴なのだけど、＜響のルーン＞は

その音を最大限に引き出すの。

オレリア

空気と、大地と、そして心を

揺るがすような、雄壮な音をね。

オレリア

このルーンの力を使いこなせる

ようになること……それがあたしに

課せられた任務なのよ。

キャトラ

修行中の身ってわけなのね。

オレリア

なかなか難しいところなのよね。

技量の問題ってわけでもないし。

アイリス

特別なルーンとなると誰でも使える

わけじゃありませんからね……

キャトラ

アタシたちにできることがあったら

協力するわよ。おもに聴く方でね！

オレリア

ふふ、ありがとう。楽士にとって

観客の感想はなにより糧になるわ。

オレリア

…………

思い出5

主人公たちは、
オレリアの淹れた紅茶を飲みながら
彼女の演奏を聴いていた。

キャトラ

最初会ったときも感じたけど、

ほんとすごい重低音よね～。

アイリス

うん、まるで胸の奥に響いてくる

みたい……

オレリア

……ふぅ、だめね。

キャトラ

えっ、なんで？　別に変なところは

なかったけど……

オレリア

先代のチューバはこんなものじゃ

なかったわ。

オレリア

ただ音を響かせるだけじゃない。

まるで魂にまで伝わるような……

とにかくすごかったのよ。

オレリア

チューバの奏者なら、

誰だってあんな音を出せるように

なりたいって思うわ。

アイリス

それもルーンの力なんでしょうか？

オレリア

きっとそうでしょうね。

でも、あたしの演奏じゃルーンは

なにも反応を示さない……

キャトラ

そんなあせらなくてもいいじゃん。

気楽にいきましょうよ～。

オレリア

……あたしは軍楽隊に入るために、

彼女と、それからいろんな人に

助けられたわ。

オレリア

だから、早く一人前の楽士になって

みんなの恩に報いたいの。

オレリア

きっと彼女もあたしに期待してる。

ちゃんとこの任務を終えて、

本物の演奏を届けたいの……

キャトラ

ごめん。

ちょっと無神経だったわ。

オレリア

っと、あたしもごめんなさい。

観客を暗くさせちゃうなんて、

楽士にあるまじきことだったわ。

アイリス

……オレリアさん、よければもっと

演奏を聴かせてくれませんか？

キャトラ

あ、アタシも聞きたーい！

オレリア

……ありがとう、みんな。

もう少しがんばってみるわね。

オレリア

っと、その前に……

紅茶のおかわりはいかがかしら？

キャトラ

あ、いつの間にか空だったわ。

おかわりちょうだ～い。

アイリス

ありがとうございます。

いただきます。

オレリア

了解よ、少し待っててね。

オレリア

（……そういえば、この状況、

まるであのときの園遊会

みたいね……）

オレリア

（彼女が気に入ってくれた

あの演奏……今のあたしに

できるかしら）

オレリア

（あたしに音楽を

思い出させてくれたあの演奏を……）

思い出6

オレリア

え！？　チューバが光ってる……？

アイリス

これは……＜響のルーン＞が

反応してるんだわ！

キャトラ

オレリア！

今ならいけるんじゃない？

オレリア

ええ、そんな気がするわ！

よし……

光り輝くチューバを抱え、
オレリアは演奏をはじめる――

キャトラ

おおお……なにこれ……！
なんだか身体で音楽を聴いてる
みたい！

アイリス

チューバの音色が飛行島全体に

響いてるんだわ……！

やがてルーンの光が収まると、
オレリアはおもむろにチューバを
口許から離した――

オレリア

できたわ……
今のは間違いなく、先代の奏でた
音色と同じものだったわ！

キャトラ

やったじゃない、オレリア！

アイリス

でも、どうして急にルーンが

使えるようになったのかしら。

オレリア

……あたし、今まではきっと

楽しんでなかったんだと思う。

キャトラ

ん、どういうこと？

オレリア

楽士になる前は、ただひたすら

チューバを弾く音楽が好きで、

その思いを伝えるのに必死だった。

オレリア

でもそんな演奏を彼女は好きだって

言ってくれたわ。……そのときの

気持ちを思い出したの。

アイリス

……きっとその純粋な気持ちに、

ルーンは応えてくれたんですね。

キャトラ

まあ、これでオレリアの任務も
無事完了ってわけね！

オレリア

……うーん、そう思いたいけど、

まだ自由にルーンの力を

使いこなせたわけじゃないわ。

キャトラ

あ、あれ、そうなんだ。

オレリア

けれど、手応えは確かに感じたわ。

この感覚を忘れないうちに

演奏を続ければ、きっと……！

キャトラ

それじゃあ、アタシたちは

観客としての役目を

果たしましょうかね。

オレリア

ふふ、ありがとう、みんな。

それじゃあ、あたしのチューバ、

ぜひ聴いてちょうだいね。

オレリア

（この演奏を、飛行島のみんなと、

帝国にいる彼女に捧げるわ）

オレリア

（そして、次に会ったときは……

あたしが奏でるチューバを、

直接、あなたの前で――）

ボイス

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