サワワ・思い出

サワワの思い出とボイス

思い出1

見慣れない衣装の少女が、
巻物を広げてブツブツ言っている。

？？？

ええと、人探しの項目から

逆引きで検索して……

あった！

？？？

＜上昇気流の術＞。

まず、風を吹き上げて

空の高いところに上ることで……

キャトラ

なーに、それ？

なにが書いてあるの？

？？？

ひゃあっ！？

？？？

あ、あなたたちは？

キャトラ

あらあら、

読むのに集中して

アタシたちに気づかないなんてね。

アイリス

こんにちは、私はアイリス。

こっちはキャトラと

主人公です。

サワワ

失礼いたしました。

私は、サワワと申します。

＜風神見習い＞をしています。

キャトラ

＜風神見習い＞？

もしかして、その巻物は

風の力を使うための？

サワワ

はい、そうです。

＜風神の巻物＞といいます。

キャトラ

へえー、なんだか面白そう！

ねえ、なにかやってみてよ。

サワワ

え？

いえ、

たわむれに力を使うわけには……

キャトラ

いいじゃない、

減るもんじゃないでしよ？

サワワ

ですが……

キャトラ

ねえねえ、
ちょっとでいいから見せてよ。
サワワ、お願い！

サワワ

いえ、でも……

キャトラ

少しだけでいいから！

ピューッと風吹かせてみてよ。

サワワ

……わかりました。

きっと、これも修行……ですよね。

キャトラ

やった♪

わくわく……

サワワ

では、参ります。

サワワは、
不思議な印を結ぴ始める。

サワワ

ヒュー・ピュー・ゴウ、

ヒュー・ピュー・ゴウ、

ヒュー・ピュー・ゴウ……

サワワ

風、来！

突如、突風が飛行島に吹き抜ける！

キャトラ

え、ちょ……！
にゃにゃにゃ！？
ぎにゃーっ！？

アイリス

あっ、キャトラ！

アイリス

飛んでっちゃった……

サワワ

す、すみませんっ！
私、力の制御が
まだうまくできなくて！

サワワ

こんなときの解決法は……
今、＜風神の巻物＞で調べますね！

アイリス

いえ、それより、
早く追いかけなきゃ……
キャトラー！

思い出2

サワワ

キャトラさん、
この間は吹き飛ばしてしまい、
申し訳ありませんでした！

キャトラ

まったく、

空の果てまで

飛んでっちゃうかと思ったわ。

サワワ

本当にごめんなさい。

私たち、まだまだ見習いなので……

キャトラ

もういいわよ。

……ん？『私たち』ってことは、

他にもアンタみたいなのがいるの？

サワワ

はい。

私には双子の姉妹がいるんです。

キャトラ

双子って、

やっぱり＜風神見習い＞なの？

サワワ

いえ、

私たちは、＜風神＞と＜雷神＞。

二人で対になる存在なんです。

キャトラ

＜雷神＞……？

サワワ

＜雷神＞の仕事は、

空で稲光や雷を発生させ、

地上に落とすことです。

サワワ

私たちの故郷では、

＜風神＞と＜雷神＞が協力して

天気を司るお役目があるんですよ。

サワワ

ただ、私と同じく

見習いですので、頑張って

修行しなければならないんです。

キャトラ

へえー。修行の旅かあ。

サワワ

なのに、あの子ったら、

このあたりが珍しいからと

一人で行ってしまって……

キャトラ

あれま。

サワワ

―緒に立派な＜風神＞と＜雷神＞に

ならないといけないのに……

キャトラ

まあまあ、

そんなに気負いなさんな。

アイリス

そうですよ。

お二人はまだ

こちらに来たばかりなんでしょう？

サワワ

いえ、でも……

キャトラ

適度な息抜きも必要よ。

アンタも、

もっと楽しめばいいじゃない。

サワワ

＜息抜き＞……ですか？

＜息＞ということは、何やら

風の力に関係がありそうですね。

キャトラ

え、そうなのかしら？

サワワ

わかりました。

では、＜適度な息抜き＞の

しかたを調べますね。

キャトラ

いや、

そーいう意味じゃないんだけど。

サワワ

＜風神の巻物＞に

書いてあるかもしれません。

ええと、＜息抜きの方法＞とは……

キャトラ

じゃなくてー！

適当に楽しみなさいよ、

っていってるの。

サワワ

＜適当に楽しむ＞ですって？

それも初耳です。

サワワ

では、＜適当に楽しむ方法＞を

調べますね。

キャトラ

アンタねー。

思い出3

サワワ

うーん、

こんなときは

どうすればいいのでしょう。

キャトラ

サワワ、

また＜風神の巻物＞読んでるの？

飽きないわねえ。

サワワ

はい、

判断に迷うことがありまして……

キャトラ

なにがあったの？

サワワ

今まで私たちは、

あまり人間の皆さんの

住んでいないところにいたんです。

サワワ

ですので、風を吹かせても、

あまり皆さんの生活にも

影響を与えなかったのですが……

キャトラ

こっちだと、どうなるの？

サワワ

私が風を吹かせれば、

雲の移動などで、

天候に影響を与えます。

サワワ

そうすると、

必然的に農業や漁業にも

影響を与えてしまうんです。

サワワ

たとえば、作物のため

晴れてほしいのに、雨が降ったり

逆に日照りが続いて……

サワワ

天候は屋外での活動全般にも

影響を与えますので、

商取引にも関係してきます。

キャトラ

アタシ猫だから、

よくわかんないけど、

いろいろ面倒なのねえ。

サワワ

こうした天候の変化で

困っている方がいる一方、

喜んでいる方もいて……

キャトラ

なるほどねー。

けっこう難しそうね。

サワワ

ええ、私の風で大勢の方に

影響を及ぼすということは、

責任重大ですから。

サワワ

もっと、

私に知識があれぱよいのですが……

先人の知恵をお借りしなければ。

サワワが、
＜風神の巻物＞を広げる。

広げられた巻物には
文字がびっしり詰まっている。

キャトラ

うわあ………

よくそんなの読めるわねえ。

サワワ

過去の事例を確認できれば……

サワワ

＜風神の巻物＞第６条第１項。

人間の生活を

みだりにおびやかしてはならない。

サワワ

やはり、そうなのですね……

サワワ

＜風神の巻物＞第１５条第３項。

公共の利益のため、

風の力を公平に行使すべし。

サワワ

『公共の利益』……やはり、

好き勝手してはいけないのですね。

サワワ

＜風神の巻物＞第５８条第７項。

第７９条第５項。第９６条第２項

などにも同様の記述が……

キャトラ

ちょっと、ちょっと、

どれだけクドクド書いてあるのよ、

それ。

サワワ

でも、やっぱり、

解決策が見つかりません。

いったい、どうすれば……

キャトラ

そんな細かいだけのルール

気にしなきゃいいのに。

サワワ

いえ、ダメです。

＜風神見習い＞としての

責任を果たさなければ。

キャトラ

あーあ、

せっかくの風を操る能力なのに、

そんなのに縛られるなんて……

サワワ

第１２９条第1項。

第２０２条第３項。

第１２１条第５項……

思い出4

サワワ

……はあ。

キャトラ

どうしたの、元気ないわね。

アイリス

サワワさん、

どうかされたんですか？

サワワ

皆さん……

アイリス

私たちでよければ、

相談に乗りますよ。

キャトラ

このキャトラさんに任せなさい！

サワワ

ありがとうございます。実は……

サワワ

さっき、風船を飛ばしてしまって、

泣いている子を見かけたんです。

サワワ

かわいそうにと思って、つい、

私の風の力で風船を

戻してあげてしまったのですが……

キャトラ

へえ、アンタ、

いいことしたじゃない。

サワワ

ですが、そういつも、

誰かが困っているからといって、

力を使うわけにはいきません。

サワワ

＜風神＞の本来の役目とは、

些細な個人的理由で

風を吹かせることではないのです。

アイリス

でも、サワワさんは、

そのとき、その子を喜ばせたい、と

思ったんでしょう？

サワワ

はい。

たしかに、そうでした。

ですが……

キャトラ

別に、

いいことしたんだから、

いいんじゃない？

サワワ

でも……

＜風神見習い＞の立場として、

これでいいのでしょうか。

キャトラ

そんなに、

面倒くさく考えることじゃないと

思うけどねえ。

サワワ

やはり、ここは、

＜風神の巻物＞を読んで、
どうすべきか調べますね！

キャトラ

またかい！

アイリス

あれ？　そういえば……

キャトラ

どうしたの、アイリス？

アイリス

サワワさん、いつも、

＜風神の巻物＞に書いてある通りに

力を使っているのに……

キャトラ

あ、そうか。

風船を返してあげたのって、

サワワのとっさの判断よね。

サワワ

やっぱり、＜風神の巻物＞にも

書かれていないようです……

キャトラ

……この子、

自分のしたことに

気づいてるのかしら？

思い出5

黒い雲が空に広がっている。
飛行島に嵐が近づいているようだ。

キャトラ

きゃあ、雨！　ぬれちゃう～！

アイリス

風も強くなってきたわね。

このままじゃ、

飛行島の物が飛ばされちゃうわ。

サワワ

皆さん、ごめんなさい！

私、＜風神見習い＞なのに、

嵐の気配に気づかないなんて。

サワワ

ずっと考え事をしていて……

うっかりしてしまったんです。

アイリス

嵐は嵐、

サワワさんのせいじゃないわ。

気にしないでください。

キャトラ

それより、サワワの力で

なんとかできないの？

サワワ

わかりました。
では、やってみます！

サワワ

＜風神の巻物＞

第１０条第５項によりますと……

キャトラ

は、はやくしてよー！

サワワ

はいっ！
ただいま、調べています！

突然、激しい風が、
サワワたちに吹き付ける。

サワワ

きゃっ！？

広げられた＜風神の巻物＞は、
空へと舞い上がった。

サワワ

ま、巻物が！

サワワ

どうしましょう、

あれがないと、私……！

アイリス

落ち着いて、サワワさん。

雨が激しくなってきたわ。

今はまず建物に入りましょう。

キャトラ

そうね！
このままじゃみんなずぶぬれよー！

サワワ

でも、＜風神の巻物＞を

取り戻さないと……

遠くで稲光が見え、
その後、雷の音が響く。

キャトラ

きゃあ！

アイリス

大丈夫よ、キャトラ。

飛行島は頑丈だから……

キャトラ

ほんとに？

アイリス

ええ、きっと、おそらく……

キャトラ

わーん！

皆の不安に呼応するように、
嵐の黒雲は飛行島に
覆いかぶさってくる……

サワワ

私が、なんとかしなければ……

私が……

でも、どうすればいいんでしょう？

思い出6

サワワ

この光……

嵐の中なのに、まるで

お日様のぬくもりのようです……

サワワ

そうですね……

私がこちらに修行に来た意味が、

少しわかった気がします。

サワワ

教本に書いてあることを

ただ守るだけでは、

一人前にはなれませんものね。

キャトラ

そうよ、サワワ。

アンタ、ほんとは

自分の意志で行動できるんだから。

アイリス

サワワさん、

もっと自信を持ってください。

サワワ

ありがとうございます、

皆さん……！

サワワ

私、今、
自分にできることをします！

キャトラ

その調子よ、サワワ。

いけいけー！

サワワは、
嵐の中、静かに空を見上げる……

サワワ

この嵐に、

真っ向から力で対抗しても、

押さえつけることはできません。

サワワ

ならば、無理をせずに、なんとか、

やりすごすことができれば……！

サワワは、
大きな風神のうちわをかまえ、
目を閉じ、精神集中する。

サワワ

ヒュー・ピュー・ゴウ……

ヒュー・ピュー・ゴウ……

ヒュー・ピュー・ゴウ……

サワワ

ヒュー・ピュー・ゴウ……

ヒュー・ピュー・ゴウ……

ヒュー・ピュー・ゴウ……

サワワ

ヒュー・ピュー・ゴウ……
風、来！

柔らかな風が、
飛行島を吹き抜ける……

キャトラ

これって！？

アイリス

風が、収まっていく……？

キャトラ

サワワ、嵐を静めたの！？

サワワ

いえ、飛行島の周囲に、

うすい空気の膜を

張らせていただきました。

サワワ

嵐はいつか通り過ぎていきます。

それまで、やりすごしましょう。

――こうして、飛行島は、無事に
嵐を抜けることができたのだった。

キャトラ

やったわね、サワワ！

アイリス

ありがとうございます。

サワワさん。

サワワ

いえ、ルーンの光のおかげです。

私は大切なことに気づきました。

サワワ

これは飛ばされてしまった

＜風神の巻物＞！

拾ってきてくださったんですね。

どうもありがとうございます。

サワワ

よかった……。

＜風神の巻物＞は

とても大切なものですから。

サワワ

でも、これからは私、

なるべく巻物に頼らずに

自分で考えて頑張ってみます。

キャトラ

そうね、それがいいと思うわ。

サワワ

はい、きっと、これが、

立派な＜風神＞になるため、

私のなすべき修行なんです。

さわやかな風が、サワワと
主人公たちの
頬をなでていく……

サワワ

なんだか、身も心も、

とっても

軽やかになった気がします……！

ボイス

---

◀ 思い出まとめへ戻る

◀ サワワへ戻る