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リンゴ・思い出

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思い出1

――ふっ!


歩いていると――
突如、身軽な格好の少女が、
屋根の上から降ってきた。


あわてて足を止めると、
彼女は、こちらの目の前に
鮮やかな着地を決め……


???

ほう……


どういうわけか、りんごを片手に、
じ……、と見つめてきた。


???

この身のこなし……

さすがだな――


???

予期せぬ危険にも、即座に

対応する、鋭敏な反射神経――


???

そして、相手との衝突を見事に

避けえた、機敏な回避神経――


???

これほどの身体能力を発揮できる

者など、我が忍者の里にすら、

五人といるまい……


少女は――ニヤリとして、
持っているりんごをかじった。


???

シャクリ……


???

――さすがはワタシだな。

百年、いや、千年に

1人いるかいないか、

それほどのレベルだ……


キャトラ

……って、今の解説、

オール自画自賛ッ!?


???

……ん? なんだ、おまえたち。

まだいたのか。せっかくワタシが

見事に激突を避けてやったのに。


キャトラ

しかもアレひとり言!?


リンゴ

ワタシの名はリンゴ……

忍者だ。


キャトラ

聞いてもいないのに忍者が自分で

忍者って名乗ったぁ――――!?


リンゴ

自己紹介をしたまでだ。

ワタシはこれから、この島に

厄介になるのだからな。


アイリス

あら、そうだったの。

よろしくね、リンゴ!


リンゴ

忍者として修練を積んできた

ワタシは、忍びの術と弓の技に

長けている。必要な時は、

いつでも声をかけるがいい。


リンゴ

ただ、ワタシは大の甘党で、

辛い物を食べると、一両日は

テンションがガタ落ちになる。

注意してくれ。


キャトラ

はあ。


リンゴ

また、ワタシは非常に

キレイ好きだ。トイレが汚いと、

死ぬほど不機嫌になる。

これも、気をつけてほしい。


キャトラ

……はあ。


リンゴ

それから、あと――


キャトラ

だぁ――――っ!!


思い出2


リンゴ

忍者のなんたるかを、

知りたそうな顔をしているな。

主人公。


リンゴが天井裏から、
逆さまに垂れ下がって現れた。


キャトラ

うわぁっ!? アンタ、なんで

そんなトコから出てくるのよ!?


リンゴ

天井裏に隠れる忍術……

つまり<天遁の術>を使ったからだ。

潜入は、忍者の得意分野でな――


キャトラ

理由を聞いてんの! 理由を!!


リンゴ

気づかれることなく敵地に侵入し、

時に調査、時に工作を行い、

目的達成後は速やかに離脱する……


リンゴ

技術や身体能力だけではない。

優れた頭脳と精神力もまた、

潜入には必須の要素だ。


キャトラ

聞いちゃいないし……


リンゴ

そのすべてを兼ね備えた

真なるエキスパート……

そうでなければ忍者は務まらん。


アイリス

リンゴもそうなの?


リンゴ

その通り……

と言いたいところだが、

ワタシはまだまだ半人前だ。


キャトラ

あら、意外……

前みたいに自分ベタぼめを

始めるかと思ったのに。


リンゴ

ワタシは常に、自己を含むすべての

要素を客観的に判断している。


リンゴ

ワタシは年若く、忍者として

必要なスキルの数々も、

まだまだ荒削りの域を出ない。


リンゴ

だが――ワタシには、それを補って

あまりある卓越した身体能力と、

研ぎ澄まされた冷静さがある。


リンゴ

そのワタシが、

このまま5年、10年と修行を

続け、技を磨き続ければ……


リンゴは、手にしたりんごを
かじり、ニヤリと唇を歪めた。


リンゴ

これは……

化ける>かもしれんぞ――?

シャクリ……


アイリス

すごい……本当に、ほかの誰かの

ことみたいに語ってる……!


キャトラ

……結果、自分ベタぼめじゃん。


思い出3


リンゴ

我が里の忍者たちは、

みな、果物にちなんだ名前を

与えられている……


びょうびょうと風が吹く。
こちらに背を向けた状態で腕組みを
したリンゴが、そう告げる……


キャトラ

また唐突に語り始めるし。


リンゴ

ワタシの由来はもちろん、リンゴ。

キングオブスタンダードフルーツ、

果物のなかの果物だ。


リンゴ

これは<忍者のなかの忍者になれ

と頭領が願ってくれたから――

なのではないかと思っている。


キャトラ

憶測!?


アイリス

だから、リンゴはいつも、

りんごを食べているのね。


リンゴ

――果たして、そうだろうか。


アイリス

え……?


リンゴ

ワタシがリンゴと名づけられたのは

……本当にそれが理由だろうか?


キャトラ

アンタ、会話する気ないの!?


リンゴ

りんごは、古今東西の神話・伝承に

おいて、<神々の食べ物>と

されることが多いという――


リンゴ

神の果実>――それはすなわち、

人間にとって<禁忌の果実>。


リンゴ

私の人間離れした才能は、もはや

禁忌>と言っていい……

そういうことなのかもしれない……


リンゴ

シャクリ……


キャトラ

アンタのその性格は、ある意味、

確かに禁忌だけどね。


アイリス

あら? リンゴ、

肩に糸くずがついてるよ。


アイリスが、ひょい、と
糸くずを取ってやると――


リンゴ

ぐばらぼがどきゅをふぉうっ!?


リンゴが絶叫を上げて飛び跳ねた。


キャトラ

どんな悲鳴!?


リンゴ

ば、ばばばばばば馬鹿な……

まるで気配がなかった!


キャトラ

えっアンタ実はアタシたちがいるの

気づいてなかったの!?


アイリス

よっぽど、

ひとり言に夢中だったのね。


リンゴ

千年に1人の逸材とされるワタシの

背後を取るとは……オマエたちも

同クラスの逸材だったのか……!!


キャトラ

どんだけ豊作なのよ! 今!!


思い出4


キャトラ

おなか空いてきたわね~。

おやつ食べごろ~♪


アイリス

そうね、きっとヘレナさんが

パイを焼いてくれるわ。


リンゴ

あぷるげぼぎばぶじゃぁ――っ!!


キャトラ

ひぃぃいいいい――――っ!?


地面からリンゴが生えてきた。


キャトラ

な、なななななななんなのぉ~!?

なんで地面から出てくるのよ!?


リンゴ

土遁の術だああああそれより!

りんご! りんごをくれ!

ワタシに! りんごを!!!


アイリス

お、落ち着いて、リンゴ。

いつものりんごはどうしたの?


リンゴ

うかつだったッ……!

昨日の夜、里帰りした際に、

家に置き忘れてきてしまったッ!


リンゴ

アレがないと……あの

シャキシャキ感がないと、

ワタシはシャッキリできないんだ!


キャトラ

アンタのいつものあの態度、

りんごのシャキシャキ感で

保ってたの!?


リンゴ

りんごぉ~……

我にりんごをぉ~……

ぐらぶげびばうぉおお~……


キャトラ

ホントだ、

シャッキリ感が絶滅してる……


アイリス

みかんなら、持ってるけど。

ヘレナさんにパイにしてもらおうと

思っていたから――


リンゴ

えぇ~……みかんん~?

シャキシャキ感なさそうぅ~。


リンゴ

知り合いに、いつもみかんを

食べている忍者とかいるけどぉ……

ぜんぜんシャッキリして

ないんだよね~。


キャトラ

試しに一度、食べてみたら?

意外とシャッキリするかもよ?


リンゴ

うーん……そうじゃのう。

やってみてもいいかのう。


キャトラ

ってなんかどんどんシャッキリから

遠ざかってるぅ!?

早く! 早く食べて! ほら!


リンゴ

これ、そう急かすんじゃないわい。

まったく、むぐむぐ……


リンゴ

……おお、これはッ!


キャトラ

どう? シャッキリした?


リンゴ

甘くて、やわらかくて、

あんがい、おいしぃ~い♪


キャトラ

え。


リンゴ

ふにゃぁ~……これ、ダメだ~。

忍者をダメにするやつだ~。

にゃっふぁ~。


アイリス

すっごく、ふにゃふにゃ……


リンゴ

ふにゃ~。ふにゃにゃ~。

ダァ~メ忍者だぁ~~~。

うへへ~。


キャトラ

マタタビもらった猫じゃ

ないんだから。


思い出5


リンゴ

シャック……シャック……

シャック……シャック……


タウンの片隅で、リンゴが、
しゃくりあげながら
りんごをかじっている……


アイリス

リ――リンゴ?

どうしたの?


リンゴ

実は……この前の潜入任務で、

敵に捕まってしまって……

シャック……シャック……


アイリス

ええっ!?


キャトラ

言動はどもかく、忍びの技では達者な

アンタが捕まるなんて……

いったい、どうして――


リンゴ

すぐに頭領が助けてくれたが、

こう言われたんだ……


リンゴ

『おまえは、すぐいい気になって

 自己分析を始めるが、その間、

 まるで周りが見えなくなる』

 って……


アイリス

あれだけ<客観的な評価>が

得意なのに、

そこは気づいてなかったのね。


リンゴ

シャック……そうなんだ……


リンゴ

ワタシはこれまで、自分の能力や

行動を思い返しながら、

客観的に分析してきた……


リンゴ

だが、それゆえ<分析中の自分>を

分析することはできず、分析中に

出てしまう悪癖に気付けなかった!


キャトラ

うーん……こういうのも、

皮肉な話、っていうのかしらね?


リンゴ

りんごだけに。


キャトラ

余裕あんじゃないのアンタ!?


リンゴ

これじゃ、忍者として失格だ……

千年に1人の逸材>なんて

言っていたのが恥ずかしい……!


キャトラ

失格うんぬん関係なしに、

その発言は恥ずかしいと思うけど。


リンゴ

あぅあぁああぁぁ~……

ダメだぁ~……ダメダメだぁ~……

ダメ忍者だぁ~……


リンゴ

ぶげらどぼぎぐべばぁ~……


思い出6


リンゴ

……!? この輝きは……


リンゴ

尊くも華々しく、爛漫にして剛健、

なによりこの、目の覚めるような

みずみずしいシャキシャキ感……!


キャトラ

食ったんかい。

光。


リンゴ

すごい……全身から頭のなかまで、

かつてないほどシャッキリとして

……そうか!


ハッと目を見開いてから――
リンゴは、
勢いよく、りんごをかじる!


リンゴ

――シャクリ!


リンゴ

主人公!

頼む、ワタシを捕まえてみてくれ!


キャトラ

リンゴ、どうするつもりなの?


リンゴ

これまでのワタシには、

欠けていたところがあった――


リンゴ

なまじ実力がありすぎるため、

何事も自分のなかで完結してしまい

外部を気にしていなかったのだ。


リンゴ

才能も、時として弊害となる……

新の忍者となるなら、それに気づき

一皮むける必要があった……


アイリス

……捕まえちゃって、いいのかな?

客観視>モードに

入ってるみたいだけど――


キャトラ

うーん。いーんじゃない?

やっちゃえ主人公!


ぶつぶつとつぶやき続けるリンゴに
手を伸ばすと――


リンゴ

――シャクリ!


リンゴの姿がかすんで消えた――
かと思うと、こちらの背後に立って
りんごをかじっている!


キャトラ

今のはッ……残像ッ……!?


アイリス

客観視>モードなのに、

ちゃんとかわした――!


リンゴ

ほう……やはり、そういうことか。

なるほど、考えたな――


リンゴ

自己分析に夢中になれば、当然、

外部の情報は遮断される……


リンゴ

だが、<夢中>をさらに深めて

無我の境地>に達することで、

無意識的反射で攻撃をかわす

心眼>に目覚めたか……


リンゴ

なんという逆転の発想!

極めた短所が長所と化した!

名づけて奥義、<天瞬遁功>――!


リンゴ

――シャクリ!


アイリス

すごい、何度やっても、高速で

かわして背後に回ってる……!


キャトラ

……でも、背後に回っても、

自分ベタぼめして終わってるよね、

あの奥義……


リンゴ

まさに天井知らずの才能だな……

どこまで伸びるのだ、ワタシは……


リンゴ

これは……ひょっとすると、

ひょっとするぞ……!!

コメント (リンゴ・思い出)
  • 総コメント数5
  • 最終投稿日時 2015/10/04 23:52
新着スレッド(白猫プロジェクトwiki【白猫攻略wiki】)
ゲーム情報
タイトル 白猫プロジェクト
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2014/07/25
    • Android
    • リリース日:2014/07/13
カテゴリ
ゲーム概要 【[リコリス・リコイル]コラボ  4月12日より開催!】

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